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エレベーターで一階に降りると、入口の自動ドアの付近になぜか遥がいた。
槙人が来たことに気付くと、スマホからぱっと顔を上げて眩しいくらいの笑顔を向けてくる。
「やっと来たー! 待ってたんだよ」
「なんでだよ、帰れよ。てか勉強しろ」
「さっきまで向かいのカフェで勉強してたよ。もうすぐ降りてくるかなと思って」
「ずっと待ってたのか?」
「つまんないクリスマスにしちゃったお詫びに。はい、これ」
そう言って遥が差し出してきたのは、向かいのカフェのホワイトスノーキャラメルモカとかいうクリスマス限定ドリンクだった。
紙カップにプリントされているサンタクロースの横に、「ごめんね☆」とマジックで吹き出しが書かれている。
槙人は思わず笑った。
「やっすいお詫びだなぁ。まあ許してやるか」
ビルを出て、駅に向かって並んで歩き出す。今日の予報は曇りのち雨。夜遅くから雪になるかもしれないらしい。
並んで歩く遥を横目で眺める。
色素の薄いゆるくウェーブのかかった髪、白い肌、まん丸の大きな目と、アイドルみたいな可愛い顔をしているのに、遥は意外と背が高い。授業の時は座っているので意識しないが、一七〇センチ半ばの槙人を超えている。最近の男子高校生は発育がいいなぁ、と三つしか変わらないのにじじくさいことを考える槙人であった。
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