1. 講師と受験生

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 エレベーターで一階に降りると、入口の自動ドアの付近になぜか遥がいた。  槙人が来たことに気付くと、スマホからぱっと顔を上げて眩しいくらいの笑顔を向けてくる。 「やっと来たー! 待ってたんだよ」 「なんでだよ、帰れよ。てか勉強しろ」 「さっきまで向かいのカフェで勉強してたよ。もうすぐ降りてくるかなと思って」 「ずっと待ってたのか?」 「つまんないクリスマスにしちゃったお詫びに。はい、これ」  そう言って遥が差し出してきたのは、向かいのカフェのホワイトスノーキャラメルモカとかいうクリスマス限定ドリンクだった。  紙カップにプリントされているサンタクロースの横に、「ごめんね☆」とマジックで吹き出しが書かれている。  槙人は思わず笑った。 「やっすいお詫びだなぁ。まあ許してやるか」  ビルを出て、駅に向かって並んで歩き出す。今日の予報は曇りのち雨。夜遅くから雪になるかもしれないらしい。  並んで歩く遥を横目で眺める。  色素の薄いゆるくウェーブのかかった髪、白い肌、まん丸の大きな目と、アイドルみたいな可愛い顔をしているのに、遥は意外と背が高い。授業の時は座っているので意識しないが、一七〇センチ半ばの槙人を超えている。最近の男子高校生は発育がいいなぁ、と三つしか変わらないのにじじくさいことを考える槙人であった。
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