5. 先輩と後輩 卒業

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5. 先輩と後輩 卒業

 三月下旬、槙人はついに大学を卒業した。  モラトリアムの終わりとともに、約一週間後には果てしない社会の荒波へ漕ぎ出すことになる。その目まぐるしさに置いてけぼりになりそうになるが、時の流れは容赦ない。 「四年のみんなー! 卒業おめでとー!」  卒業式後の映研の飲み会で乾杯の音頭をとったのは、四月から二回目の四年生をやる神田だ。  笑いの渦とともにグラスを合わせる音があちこちで鳴った後、いつもの飲み会の喧騒に覆われる。  卒業式が昼過ぎに終わってスーツから着替える間もなく、ゼミの送別会や映研の四年生だけの〇次会など数々の飲み会を渡り歩き、映研全体の追い出しコンパに到着する頃、槙人はすっかりできあがっていた。 「ちょ、マキさん大丈夫っすか!?」  トイレに行くため座敷から出ようとして段差を踏み外し派手に転びそうになったところを、たまたま通りがかった里奈に支えられる。 「あーまじ気持ちわりぃ……吐きそう」  ここまで酔ったのは久々だ。平衡感覚が家出して上下左右がぐらぐらに傾き、腹の底から湧き上がる熱い不快感が喉元まで出かかっていた。 「待って待って! ここで吐かないでくださいよ!」 「里奈さん! おれ連れてくから戻ってて」 「あ、ハルくぅーん! まじ救世主!」
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