5. 先輩と後輩 卒業

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 映像の中の二人はしばらく話していたが、槙人が唯香の耳元で何か囁くと、唯香はこくんと頷いて、そのまま庭を突っ切ってどこかへ行ってしまった。  そこで映像は終わった。  槙人は座り込んだまま動くことができなかった。  早くしまわないと遥が帰ってくる。見られたら――  見られたら、どうなる?  別に遥に直接聞けばいい。これどういうことだよ、と笑いながら。 『好きな人がいる』 『その人は恋人がいるから』 『別れても、おれと付き合うことはないから』  半年前、学祭の時の遥が脳裏に現れる。  あの時胸に残ったざらざらした何かが、砂時計の最後の一粒のようにすとんと落ちた。  おれは馬鹿だ。なんで気付かなかった。いや、どこかで悟っていた。  でも、理性が直感を否定し続けていた。  遥が、男だからだ。  がちゃがちゃと鍵を開ける音が静寂を破る。続いて、夜明けの空気が薄闇を切り裂いた。 「お待たせー。あれ、槙人さん起きてて大丈夫なの?」  屈託のない遥の声。  足音が数歩分して、どさりとペットボトルや缶や何やらが、ポリ袋ごと床に落ちる音がした。  テレビの正面に座ってうつむいている槙人からは、遥の姿は見えない。しかし、遥が息をのんで立ち尽くしているのは気配で伝わってきた。  槙人の横に置いてある、蓋のあいた黒いボックス。空のディスクケース。動かない槙人。
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