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遥の絞り出したその言葉は、ただの友情を示している響きでは到底なくて。
「おれ、恋愛対象が男なんだ。槙人さんしか、好きになったことないけど……」
頭の中で、今まで小さな疑問として降り積もっていたものが一気に払拭されていく。
恋愛の話題を避けていたようだったのも、今まで女子からの告白をすべて断っていたのも、学祭の打ち上げの時、どこか切羽詰まった様子だったのも。
すべて、そういうことだったのだ。
「何度も諦めようとした、もしばれたら嫌われるに決まってるから。でも……でも、一緒にいたらもっと好きになった」
堰を切ったかのように遥は話し出す。
「夏合宿の映像だって、ちゃんと上映するつもりで撮ったんだ。でも二日目の夜、槙人さんと唯香が話してるのが見えて、本当になんとなくカメラを回して……その後、二人が付き合うことになったって聞いて。……おれだけが知ってる槙人さんが欲しくなったんだ」
気持ち悪いよね、と自嘲的に言った。
「SDなくしたなんて嘘ついて、こっそり持ち続けてた。自分が変な勘違いしないように、現実の槙人さんを見るために、最後に映像足して」
気持ち悪い、なんて思わなかった。湧き上がるのはただただ申し訳なさだった。
槙人と唯香が一緒にいるのを、どんな気持ちで見続けていたのだろう。
好意を寄せてくる女友達を、どんな気持ちで振り続けたのだろう。
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