6. 槙人の話

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 卒業式の直後は気まずくて連絡できず、四月を過ぎたら新入社員研修が始まったことでそちらに気をとられ――毎日メッセージアプリを開いて遥のアカウントを見つめていたのだが、連絡してみようと思い立ったのは、すでに六月の半ばだった。  元気にしてる? と当たり障りのないメッセージを送った。今までならばどんなに遅くても半日とおかずに返事がきたのに、一日経っても三日経っても既読にならない。  神田に遥の様子を聞いてみたら、そこそこ映研の集まりには来ているし、連絡も普通に取れると言っていた。それを知って、馬鹿みたいにショックを受ける自分がいた。そして、未練がましくも友達として繋がろうとしたことが恥ずかしくなった。  遥の気持ちには応えられないのに、離れるのは寂しいから近くにいたいだなんて。  時折映研の集まりに顔を出しても、遥とは会えなかった。学祭の打ち上げや追い出しコンパなど、規模の大きい飲み会はOBOGもよく来るので、槙人が参加するのはまったく不自然なことではない。だからだろうか、槙人が来る可能性のありそうな飲み会は徹底的に避けているようだった。  神田と二人で飲んだ時、おまえら何かあったの? と聞かれた。  それもそうだ、あれだけ仲の良かったハルマキが、片方が卒業したとはいえめっきりつるまなくなり、三人で飲むこともまったくなくなったのだから。
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