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次の動作を考えているうち、遥と談笑していたグループの一人が槙人に気付いて手を振った。
「おーい! マキ! こっちこっち!」
その声に、遥が振り向く。
二十二歳の遥は、槙人の記憶の中にいる十九歳の遥とはまったく違っていた。
身長は変わっていないはずなのに、少年と青年と中間のようだった細めの体が、しっかりとした骨格に筋肉のついた完全なる大人へ変貌を遂げている。
顔立ちもあどけなさが完全に抜け、大きな目の印象はそのままだがより洗練された顔立ちになった。
遥も目を見開いて槙人を凝視している。
直前まで欠席予定だった槙人が来るとはさすがに想定していなかったのだろう。遥自身、お世話になった先輩二人の結婚式を、槙人が急に出席するかもしれないという可能性だけで欠席したくなかったはずだ。
「――あ、久しぶり」
ぎこちなさを極力消して、誰にともなく手を振り返した。
大きいミスをやらかして部長に怒られた時以上に、心臓がうるさく鳴っている。とりあえず遥がいるグループへ歩き出そうとしたが、途中で映研の女子グループに声をかけられたので、そちらの話の輪に加わることになった。
親族以外だとやはり映研の招待客が多く、人数が多いので自然といくつかのグループに分かれる。式が行われるチャペルの席順は自由だったが、遥とはグループが分かれたので直接会話することはなかった。
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