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荘厳な雰囲気のチャペル。間もなく式が始まるというのに、前方の席に座っている遥の方ばかり気になってしまう。
やがて、楽隊がそろりと演奏を始めて、主役の入場が近いことを示した。
扉が開き、グレーのタキシードに身を包んだ神田が一人入場する。あまりに似合わなすぎて、槙人は思わず噴き出してしまった。神田はがちがちに緊張しており、ロボットのようなかくかくとした動きに自然となごやかな笑いが起こる。
続いて、父親と共に新婦が入場する。
ウェディングドレスに身を包んだ里奈ははっとするほど綺麗で、胸を打たれた。
幼い頃に親戚の結婚式に参加した以来でまったく記憶がなかったのだが、祝福を受ける二人とはこれほど美しいものか。
そこから結婚証明書の読み上げとサイン、誓いのキス、ブーケトスなどの定番が終わると、披露宴会場へ移った。
会場に入るまでに受付やお祝いのメッセージカードの記入があったのだが、偶然にも――本当に偶然にも、遥の隣で列に並んだ。
ああ、話さないには不自然すぎる距離になる。
そう悟った時、槙人は意を決して声をかけた。
「遥、久しぶり」
若干上ずってしまったが不自然ではない声を出せた、気がする。
無視されないか、睨まれないか。遥が振り向くまでの一瞬、槙人は祈るような気持ちだった。
「久しぶり槙人さん。神田さん、タキシード似合ってなかったね」
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