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顔立ちが大人っぽくなっても人懐こい笑顔の遥に、心底安堵した。前と同じ遥だ。全然知らない男なんかじゃなかった。
そこからは驚くほどスムーズに話せた。
披露宴もテーブルが同じだったので、自然と話題を共有するようになる。この料理おいしいとか、おかわりのドリンク何にするとか、学生時代を彷彿とさせる自然な会話。
誰かと話すのにこんなに心が躍るなんて初めてだった。三年という空白を経てまた遥と会えた。そのことがたまらなく嬉しい。
親友の祝いの席という空気感と質の良いアルコールもあり、本当に心から楽しむことができた。
夕方、披露宴がお開きになると、解散ムードになりつつも映研の面々がそれとなく集まって二次会どうするという話をしている。
その群れから外れ、遥が駅に向かおうとしているのが見えた。
ほとんど無意識に、槙人はその後ろ姿を追いかけた。
「は、遥! 待て!」
「槙人さん?」
驚いたように遥が振り向く。
「も、もう帰るのか。映研で二次会やるみたいだけど……この後予定あったり?」
「ううん、別にないけど。横浜ちょっと遠いし、ご祝儀であんまりお金ないから帰ろうかなって」
「予定ないなら、その……えっと、飲みに行かないか? 二人で。久しぶりだし、さっき結構話したけどまだ話足りないっていうか……飲み代なら奢るから!」
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