6. 槙人の話

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 幸いタクシーはすぐに捕まった。卒業式の日もこうやってタクシーに乗った。あの時も遥にたくさん迷惑をかけて、結局何一つ返せずに終わってしまった。  駅に着くと、ロータリーにスウェット姿の大久保がいた。真っ赤な目でうつむく槙人を見ると何も言わず背を向け、コンビニで酒買ってくかとつぶやいた。      ◆  もう何もかもどうでもよくなって、ストロング缶をあおりながら大久保に全部ぶちまけた。  学生時代、可愛がっていた男の後輩に告白されて振ったこと。その後三年間連絡が取れなくて今日久しぶりに再会したこと。好きだったと気付いたこと。後輩にはもう彼氏がいたこと。 「こんなことなら、あの時付き合っときゃ良かった」 「あのなあ。今は酔っぱらって自暴自棄になってるからなんでも言えるけどよ。冷静に考えておまえの選択はベストだったと思うぜ。後輩くんももう吹っ切れてるみたいだし、おまえも最小限の傷で済んだだろ、多分」 「全然済んでない、死にたい」 「二十五にもなって中坊みたいだな……おまえ、今まで一度も失恋したことないのか?」 「ありません。大久保さんとは違うんで」  おまえな、と額にげんこつを当てられる。しかしその感触は優しかった。
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