1. 講師と受験生

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1. 講師と受験生

 曇った窓ガラスの外は、クリスマス一色だ。だけど、受験生と講師にそんなものは関係ない。合格という春を見るため、クリスマスの進学塾は殺気だってすらいる。 「あーあ、だりいな」  槙人の口から、思わずそんな愚痴がため息をともに零れた。目の前に受験生がいるというのに講師にあるまじき態度である。  問題を解いていた遥が顔を上げた。 「先生、こっちまでやる気なくなるからやめてよ。せっかく応用の長文問題解いてるのに」 「だってクリスマスに引きこもって野郎の勉強見てんだぜ? ため息くらいつきたくなるよ」  遥はくるりと大きい目をわざとらしく細めて、不機嫌そうな表情を作る。高校三年生十八歳、にしては素直でかわいらしい顔だ。 「悪かったね、おれの模試の結果が悪かったせいで彼女とのクリスマスデートが無しになって」 「本当だよ。どう責任取ってもらおうかな」  実のところ、槙人としては口で言うほどこのクリスマスを嫌がってはいなかった。デートを断る口実ができてありがたいくらいだった。  サークルの先輩である彼女とは半年ほど付き合っているが、最近は一緒にいて楽しいと思うこともなく(遥に話したところ、マンネリ早すぎ、と呆れられた)、相手が卒業する三月を待ってフェードアウトしようという目算でいる。
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