大学二年生

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 夏休みが終わるころ、大学近くの公園に果恋は陽光を呼び出した。  果恋は陽光に、合唱サークルでの出来事を伝え、心情を吐露する。 「わたしがいけなかったの。合唱サークルの打ち上げのとき、先輩にたくさんお酒を飲まされて、酔いがまわって目を閉じたらその先輩に唇を奪われて。わたしは(けが)れてしまった。陽光と付き合う資格がない。別れて!」 「それは事故だ。先輩が悪いわけで、果恋は悪くない」 「わたしは陽光に申し訳なくて、一緒にいられない。どうしてもダメなの」 「僕にとっては唇を奪われても、果恋は果恋だよ。僕では慰められない?」 「……お願い、別れて。そうしないとわたしが辛いの」 「わかった。今日のところは同意する。今度手紙を書くからそれを読んでほしい」 「……わかったわ」  数日後、果恋の住まいに陽光からの封書が届いた。 *  果恋へ  僕の方こそ、今まで伝えてなかったことがあるんだ。  男子校の高校一年生だったとき、体育祭のリレーで活躍したところを、それを見ていた大人びた名も知らぬ女子高生に気に入られてしまった。  そして放課後、ふたりで喫茶店に行った。  話の流れから飲みかけのアイスコーヒーとアイスレモンティーを交換することになって、そのままストローで間接キスしてしまったんだ。  果恋が穢れているというのなら、僕はもっと穢れている。  女子高生からのプレッシャーがあったにせよ、自分の意志で間接キスをしてしまったのだから。  本当に申し訳なく思っている。  果恋が唇を奪われてしまったこと、果恋は悪くない。  僕にとっては果恋を失うことが悲しみだ。  どんなに穢れても、果恋の価値は変わらない。僕は果恋を愛している。  だから、僕のもとに戻ってきてほしい。  陽光より *  数日後、果恋から手紙で返信が届いた。 *  陽光へ  陽光の気持ちはありがたい。  でも、わたしの辛い気持ちは消えないの。  陽光との関係は、解消させてほしい。  身勝手かもしれないけれど、その方がお互いのためだと思うから。  さようなら、陽光。  あなたの笑顔、素敵だった。  果恋より * *  果恋へ  果恋の気持ちは理解した。  辛い気持ちに寄り添えないことは、とても残念だけど、別れることには同意します。  でも、気持ちに変化があったら、また連絡がほしい。  僕にとって、果恋は大切な存在だから。果恋のこと、待ってるから。  陽光より *  こうして、ふたりのお付き合いは解消となった。
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