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大学一年生のときのふたりは、授業、サークル、バイトに忙しかったが、月に一、二回ほどデートした。
午後の授業が休講の日、ふたりで大学前の国道二十号を東に進み、十五分ほどで皇居の半蔵門に出た。
そこから、皇居に沿って反時計回りに歩道を通って一周する。
たくさんの皇居ランナーたちの迷惑にならないように、歩道の皇居寄りの端を歩いていく。
「皇居ランナーは、ペースを乱さず颯爽と走っていくね」
果恋は、感心しているようだった。
「そうだね。それにみんな引き締まった体をしてるね」
陽光も、皇居ランナーの無駄のない体つきに、よく鍛えているのだなと感じる。
半蔵門を出発して、最初は緩やかな下り坂で右手に国立劇場が見えてくる。
ふたりは、劇場の大きさに圧倒された。
その後、皇居に沿った道はところどころ左にカーブしていく。
左側の皇居のお堀と木々の静かな雰囲気と、右側の国道の交通量の多さが対照的だった。
右手にそびえる警視庁を過ぎると、左側には旧江戸城の桜田門が見えてくる。
大老井伊直弼が暗殺された桜田門外の変がおこったのは、このあたりである。
桜田門をくぐると、遠くには高層ビル群が立ち並んでいる。
「自然を感じる緑の多い皇居とは対照的な景色が皇居周辺にはたくさんあるね」
果恋は東京のど真ん中にこれほどの多様性があることに驚いている。
「うん。遠くに見えるのは、丸の内の高層ビル群だね。僕たちが千葉フォルニアに行くときに待ち合わせた、東京駅丸の内地下中央口も高層ビル群の先にあるよ」
「そうなんだ。なんだか、懐かしいね」
果恋は、顔をほころばせた。
その後、道は大きく左にカーブし、皇居外苑から竹橋方面へとぬける。
国立近代美術館のあたりから長い上り坂となり、ふたりは歩くスピードを落とす。
皇居ランナーはペースを維持して坂をのぼっていく。
右手には、首都高代官町入り口が見えてきた。
グレーを基調としたとてもきれいな入り口で、ゲートへ車が入っていく。
そして、内堀通りにぶつかり左折する。
少し歩くと、英国大使館が視界に入った。
英国の歴史と威厳を感じさせるたたずまいで白を基調とした建物だった。
その後、ほどなくしてスタート地点の半蔵門に戻ってくる。
歩いて一時間ほどで一周することができた。
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