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大学二年生
大学二年生の春からもふたりのお付き合いは順調に続き、春学期が終わりを迎えた。
春学期の期間に誕生日のある陽光と果恋は、ふたりとも二十歳になった。
果恋の混声合唱のサークルは、男女混合の合唱サークルである。
春学期が終わり夏休みには、毎年軽井沢で三泊四日の合唱の練習合宿を行う。
合宿三日目の夜、次の日が東京に帰る日なので、練習が終わったあと宴会場で打ち上げとなった。
三年生の男子が果恋に近づいてくる。
少し酔っているようだったその先輩は、果恋に話しかけた。
「果恋ちゃん、あなたのことが好きだ!付き合ってほしい」
「ごめんなさい。わたし、彼氏がいるんです。違うサークルに入っているんですけれど」
「僕の方が果恋ちゃんを近くで見守っていける。僕の気持ち、受け取ってくれないかな。とりあえず、ビールを飲もうよ」
果恋はあまりお酒に強くないのだが、勧められるままにビールを次々と飲まされてしまう。
果恋は酔いで意識が曖昧になりつつあった。
少し目を閉じていると唇に少し湿った柔らかい感触がある。
何だろうと思って目を開けると、目の前に先輩の顔があった。
……どうして?こんなことに……
わたしのファーストキスは奪われてしまった。
果恋はひとすじの涙を流す。
そしてそのうちに、体をふたつに折って両手の中に顔を埋めて泣いた。
事の重大さに気づいた先輩は、その後近づいてくることはなかった。
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