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大学二年生の秋学期、陽光の心の中は寂しさと悲しさが同居していた。
果恋と付き合えない大学生活は心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになり、講義にも実験にも空手のサークルにもバイトにも集中できない。
陽光は、一年生の春から宅配ピザ店で配達のバイトをしていた。
お店にあるスクーターに乗ってピザを届ける仕事である。
仕事にも慣れ、店長であるマネージャーからも信頼される存在だった。
しかし、果恋と別れてからミスが増えるようになる。
ピザと一緒にお客様へ届けるコーラを持っていくのを忘れて、マネージャーの了解のもとコンビニで急遽買って届けたり。
ガードレールにスクーターをこすってしまい、お店の無事故日数記録がリセットされてしまったり。
学業でも身が入らず、実験の課題でプログラミングの実習のとき、正しいプログラムが組めず、何回コンパイルしてもエラーが出てしまったり。
結局、同期の力を借りてプログラムを組むことができたが、とても時間がかかってしまう。
講義も頭の中にあまり入って来なくなり、秋学期の成績は下降気味だった。
陽光は、果恋に手紙を書いた。
*
果恋へ
果恋に会えないことがこんなにつらいなんて思わなかった。
宅配ピザのバイトでは、ミスばっかりしてしまう。
実験で、プログラミングを組むことも満足にできなかった。
僕には、果恋が必要です。
前にも話したけれど、僕にとっては唇を奪われても、果恋は果恋だよ。
果恋と一緒にいたい。
戻ってきてほしい。
僕は、いつでも果恋を受け入れるから。
陽光より
*
しかし果恋からは、しばらく考えさせてほしい、と返信があるだけだった。
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