思い、出戻り、恋の行方。お別れ前夜。

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 私は魔女である。魔女であることは世の中には秘密である。  そしてモテモテである。これまで何百人もの男と付き合った。なぜだか男と別れてもすぐまた新しい男ができるのだ。モテモテなのは私のせいで、魔女であるせいではない。決して怪しげな秘薬を使って他人をトリコにしたりするわけではないのだ。ここは大事なので強調しておく。つまり健全な人間としてのお付き合いをする。魔女だと言うと、とかく全ての都合の悪いことを魔法に関連付けようとする輩が多すぎるのだ。まったく。  けれども私はどうにも飽きっぽくて癇癪持ちである。  これも別に魔女であるせいではなく、生来の私の性質である、念の為。  それでその帰結として、私は恋愛体質で、惚れっぽくてすぐ付き合うけどすぐに別れてしまうのだ。魔女といっても必ずしも強じんな精神を持ち合わせているわけではない。だから別れるときはだいたい相手のことをぶっ殺したいほど憎んでいることが大半なのだけど、そのような苛つきをずっと心のなかに保管しているのも不健康である。そんなものはとっとと自分の中からポポイと追い出してしまうのが吉。  そこで取りい出したるのがこのリング。じゃじゃん。そういう時にとても便利なリングなのだ。お別れリングと名付けた。  これは私が開発したとても細いリングなのだが、相手の薬指につけて術を発動して一晩寝ればお互いのことをすっかり忘れてしまうのだ。そして術が発動するとリング自体は透明になって物を透過する性質が付与されるから生活に支障はない。誰も指輪の存在に気づくことはできない。ステルス機能も完璧だ。  それで私は過去の男などすっぱりきっぱり忘れ去り、新しい恋にダイヴすることができるのだ。
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