ただし、好きな相手に限る

青年、襲来

「ちょ待て落ち着け！」
「この三年ずっと載ってるし、去年はアメリカの経済誌の次世代を担う期待の一〇〇人にも選ばれたんだ！　だからやっと日本に帰ってこれたんだよ！」
「そ……そのまま向こうに永住したらよかったのに……！」

　思わず漏れた心の底からの拒絶の言葉。しかし青年は全くこれっぽっちも気にした様子はなく、背後にいるもう一人の青年が「ごもっとも」と同意を示した。

「すぐおねえさんに会いに来たかったんだけど、せっかくだからちょっとおねえさんの会社買収しちゃえと思って」
「頭の中身と同じで動機が軽すぎじゃない!?」
「おれが社長になれば、毎日職場でおねえさんに会えるから最高じゃん！」
「どこがよ!!」
「そんなわけでおねえさんただいま！」
「帰れ!!」

　これまで生きてきた中で、これ程までに全身全霊を込めて叫んだ言葉はない。
　しかし当然ながら、それが叶うことはなかった。