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春
「奥井空くんって、奥井さんの弟なんだよね?」
今年、空が入学すると話したこともないクラスメイトから声をかけられることが増えた。
空はお母さんが再婚したマサさんの連れ子だ。
「うん。そうだよ。」
「これ、」
目の前の女の子は恥ずかしそうにしながら水玉模様の便箋をさしだして、
「空くんに渡してほしいの。」と言った。
「わかった。」手紙を受け取るとポケットにしまった。
美術室の窓から校庭が見えた。サッカー部に遊びにきてた空がシュート練に参加していた。ドーンと力強い音がして、ゴールの右上の角にシュートが決まった。
「あんなの取れねーよ」近づいてきた友達に髪を揉みくちゃにされながら、空はいつもの笑顔を見せていた。
空はサッカーが抜群に上手かった。家族で何度か試合の応援に行ったことがある。
仲間からパスがまわってくるとドリブルでボールを運びフェイントで相手をかわし、ゴールキーパーがいない隙間にボールを押し込む、いとも簡単に何ゴールも決めていた。
仲間とハイタッチしたあと、空はニコッと私の方見て笑った。
「すごいね!あの背番号7の子!和製メッシみたい!」と相手チームからも賞賛されて、自分のことのように嬉しくなった。
評判を聞きつけたのか、注目のサッカーキッズとしてテレビの取材も何回か受けて、空はちょっとした有名人になっていた。
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