先輩

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先輩

クリスマスに毎年、幼児や小学生の子達がメインでくるみ割り人形をモチーフにした、バレエの発表会をする。 本格的な発表会は、年1回大きなステージでやるので、お楽しみ会程度のものだった。 「えりかさん、クリスマス会、お手伝いもお願いしたいのだけど、お姉さんクラス代表として金平糖の精のとこ踊ってくれないかしら?」絢子先生に頼まれた。 拓也にクリスマス会えないことを話したら「それなら、しょうがないよな。」と言ってくれた。 子ども達が両親と連れ添ってやってきた。「メリークリスマス」と言って、レース柄の袋に入ったクッキー渡していくと皆んなレヴェランスをしながら受け取っていった。 ちっちゃい子達の踊りは可愛らしかった。クララは小6の子がやっていた。 おしまいの時間になってドアの前で子ども達を見送っていたら「妖精さん可愛かったよ!」「キラキラして綺麗だった!」と言ってもらえて泣きそうになった。 小6で身長が伸びなくなったあたりから、胸やお尻に肉がついて、思ったように身体が動かず、それを無理してやっていたから足首を痛めていた。悔しくて苦しくて、しばらくコンクールにも参加していなかった。 「えりかさん、今日はありがとうね。また月曜日待ってるわね。」良かったら、と絢子先生から子ども達にあげたのと同じクッキーを2つ貰った。 「ありがとうございました。」 重たいドアを開けたら冷気で暖かった身体が一気に冷えて「さむー」と声が出た。 顔を上げると、上着のポケットに手をつっこみ小刻みに揺れてる拓也がいた。 「あれ?どうしたの?」私は駆け寄っていった。 「ああ、クリスマスプレゼント渡したくて」 拓也の上着ポケットの中から小さな箱が出てきた。中にはクローバーのペンダントが入っていた。 「ふふ、あの漫画みたいね。」 「だろ?見た瞬間、これだ!て思って。」 「ありがとう。」 「つけてみて」 「こう?」 「ちょっと貸してみ。」首に触れた拓也の手が冷たかった。 「結構、待ったの?」私は拓也の手を持って温めた。 「いや、」 「大事なときなんだから風邪ひいたらダメだよ。」 「大丈夫だって」拓也は笑ってみせた。 「ごめん、私、なんも用意してなくて...」と言った瞬間、温めていた手に引っ張られて、拓也に抱きしめられてる格好になった。 「これ、俺のクリスマスプレゼントってことで」 拓也に抱きしめられたのは初めてで、どうしていいか分からず、 「....メリークリスマス」と言った。
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