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出会い
くじ引きで決まった美化委員会の帰り道、
「奥井さん!」
少し着崩した制服に短髪。胸の紋章が上級生だということを表していた。
突然知らない人に声かけられて固まっていると「日野拓也です。さっき美化委員、一緒だった。いちお美化委員長。」と人懐っこく笑った。
「あ、すみません。」
「いいよ、気にしないで、奥井さんって家こっちなの?一緒に帰っていいかな?」
「え、え、はい」状況が把握できないまま、反射的に頷いた。
「良かった!奥井さんって美術部なの?こないだ見かけて」
「はい」
「じゃあ絵描くの好きなんだ。」
「いや...」
「違うの?じゃあなんで美術部?」
「バレエやってて..」
「あーなるほど!俺、兄貴いるんだけどリトルシニア、あ、野球のチームに入ってて、兄貴も部活動が少ないとこ入ってたんだよ。科学部だったかな。ちなみに俺はバスケ部だよ。」
「..バスケ部」
「つっても、もう引退なんだけどね。奥井さんはこれからバレエ?」
「...今日はクラスないから」
「そうなんだ、火曜日休み?なら一緒だね。」
「俺、真っ直ぐなんだ。またね、奥井さん。」
空以外の男性に免疫がなくて言葉がなかなか出てこなかったけど、日野先輩は明るくて安心感のある人だった。
あれから日野先輩からよく声をかけられるようになった。
「奥井さん!いたいた!奥井さんって猫好き?」
「...はい。」
「昨日さ、tiktokで可愛いの見つけて、これこれ、ちょっと見てみ。」
「....可愛い」
「でしょ!昨日、見つけてさ、絶対奥井さんに見せよって思ってたんだよね。これが好きならこれも良いかも。」
「奥井ちゃん、この漫画読んでみて!ちょっと不良もんなんだけどただの不良じゃないんだよ。ちょっとタイムトラベル的な感じで。とにかく面白いから読んでみて!」
と漫画を渡されたり、
また帰り道、「これ聴いてみて!」と片方の耳にイヤホンを入れられて「奥井ちゃんってエドシーランって知ってる?shape of youて曲が1番有名なんだけど、俺この曲好きなんだよね。」
と洋楽を教えてもらったりした。
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