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「えりか、日野先輩と付き合ってるの?」
1番仲良しの美帆ちゃんが私の机まできて、ニヤニヤしながら聞いてきた。
「そういうのじゃないんだけど」
「ならどういうのなの?」
「友達?」
「いやいや、絶対日野先輩、えりかに気があるでしょ。」
「うーん?」
「告られてないの?」
「ないない」
「日野先輩って結構、人気あるんだよ。背も高いしバスケ部のキャプテンでカッコいいし。ま、えりかは家に空くんがいるからイケメン見慣れてるかもしれないけど。あんな弟いたら、理想高くなりそうだよね。」
チャイムが鳴って美帆ちゃんは自席に戻った。今の状況を考えたことがなかった。日野先輩は私のこと好きなのかな?私はどう思ってるんだろ?
ふと、窓の方に目線を向けると外では1年生が体育をやっていた。
「奥井ちゃん、今日さ、ちょっと時間ある?」
いつものように隣に歩いてる日野先輩。
空より大きいけど、マサさんより小さい。175cmぐらいかな。157cmの私は見上げないと日野先輩の顔が見れない。
「奥井ちゃん、なになに俺の顔ずっと見て。惚れちゃった?なぁーんて、冗談だけどさ、奥井ちゃん、コロッケ好き?めっちゃ上手いコロッケ屋があるんだよね。」
いつも右に曲がる道を左に曲がって200m程歩いたところに赤木精肉屋があった。
「おじちゃん、コロッケ2つ!」
精肉屋の横に小さな出窓があって、日野先輩が慣れた様子で頼んでいた。
「あいよ」
昔ながらの風貌のおじさんがコロッケを差し出した。
「拓也、今日は女の子連れてんのかい。」
「はい、ちょっと」
200円をおじさんに渡しながら先輩は照れたように言った。
「そっか、いいねー青春だね!頑張れよ!」
「あ、払います」とバックから財布を出そうとしたら「いいよ、いいよ、今回、俺が誘ったんだし、食べて欲しかったんだ。」とコロッケを一つ渡された。
「あ、ありがとう」
「そこのベンチ座ろう」
「はい。」
熱々のコロッケをおそるおそる一口食べた。ほくほくのジャガイモとひき肉が口の中でほろほろと溶けていった。
「美味しい!」
「だろだろ!部活のあととかさ、つい買いにきちゃうんだよね。」と日野先輩は私より大きな一口で口いっぱいになっていた。
「あっつ、あっつ」と夢中に食べてる姿をみて年上だけど可愛いなっと思ったら、「ふふふ」と笑ってしまった。
「え、なんで笑ってるの?」
「ううん、なんかちっちゃい子みたいで」
「え、なにそれ、ショック。」と言いながらも日野先輩は笑っていた。
「空ー!」聞き慣れた名前と甲高い女性の声でとっさに後ろを振り向いた。
そこには空と空のクラスメイトだろう男の子と女の子が数人いた。
空も今さっき私のことに気がついたみたいで目があった。
「あー俺、今日、コロッケいいや。先帰るわ。」
「え、空なんで?」とクラスメイトに呼び止められていたけれど、空は立ち止まらず見えなくなっていた。
「さっきのって弟でしょ?」
意識の反対から声がして、ハッと気がついた。
「...うん、そう。」空に日野先輩といるとこを見られて、分からないけど、嫌な感じが残った。
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