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次の朝、空はもう出かけてていなかった。
今日はクラブチームの練習があるし、週末も2日とも遠征だって言ってた。
私は空にどんな顔したらいいのか分からなくて、正直いなくてホッとしていた。
「奥井さん、日野先輩が呼んでるよ。」
HRが終わり帰りの準備をしていたら、クラスメイトに声をかけられた。
ドアの方に目を向けると、片手を顔の横に挙げた先輩がいた。教室に残っていたクラスメイトがざわついていた。
「どうしましたか?」
「奥井ちゃん、一緒に帰れる?」
「...ごめんなさい、今日はちょっと。」
「いや、逆にごめん。ちょっと話したいことがあったんだ。あ!そうだ!」日野先輩はおもむろに鞄からノートを出し端っこを切って何かを書いた。
「これ、俺のline。良かったら連絡して。」
何か予定があったわけではなかった。だけど昨日の空のことを思い出して罪悪感みたいなものが疼いて離れなかった。
家に帰ると、もうすでに空は出かけた後だった。空の部屋のドアが少し開いていて、奥に空の制服がベッドに投げ出されていたのが見えた。吸い込まれるように部屋に入っていった。ワイシャツの前にしゃがみ込んで匂いを嗅いだ。空の匂いだった。
この想いに気がついたとして、そのあとどうなるっていうのだろう。
もし今、空が同じ思いだとしても、それがずっと続くとは限らない。
昨日、コロッケ屋で見かけた空のクラスメイト、私よりずっと綺麗な子だった。
これから先、空はもっともっと素敵な人に出会う。
兄弟だから、側にいたいなら兄弟でいたほうが、きっといい。
私はそっとワイシャツを戻して部屋を出た。
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