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サッカーの練習から帰ってくると、もう寝ているのか真っ暗だった。
手探りでスイッチをつけるとリビングの明かりがついた瞬間、椅子にかけてある、えりかの淡いピンクのパーカーが目に入った。
疲れた身体に頭も働かず、身を任せるまま惹きつけられるようにパーカーに近づいた。
そっと指で触れた。
まだほのかにあたたかい。指で撫でて、手の平で触って、掴んだ。顔に近づけて匂いを嗅いだ。えりかの匂いだった。
一気に鼓動が早くなるのを感じた。
ガタっとどこからか音がして慌てて手を離した。その瞬間、我に返って自分がしたことを思い出した。
...俺、もうヤバイかもな。えりかにとって俺は家族でそれ以上なんでもない。傷つけたいわけではない。でも、えりかが他の誰かといるのを見るのは耐えられそうにない。
前々から考えていたことがある。高校になったらユースじゃなくて、全寮制の強豪校に進もうと思ってる。大阪の高校からも既に声をかけられてる。えりかと離れたいわけじゃない、けど心が千切れそうだ。その方がきっといい。
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