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理斗と唯菜の出会い
話は理斗がショットバーでグラスホッパーを飲む三週間ほど前にさかのぼる。
少し肌寒くなった秋晴れの日、理斗は竹原唯菜と副都心の雑居ビルで開催された街コンで知り合う。
業界では大手の会社が主催するこの街コンは身元の確認もしっかりしていて、参加者には全員、写真付き身分証明書と役所からの独身証明書の提示が義務付けられている。
コンセプトは恋人探しで、恋人となった延長線上に結婚も視野に入れるという形で、お見合いの街コンというよりは、ややカジュアルな恋人探しの街コンだった。
社会人となり二十代も後半に差し掛かったふたりは、この街コンに参加していた。
一対一で話し合った理斗と唯菜は、お互いに話しやすいなあ、という印象を持つ。理斗はひとりっ子で大手企業に勤務し、休みは土日祝、趣味は将棋だと話した。
対する唯菜は町工場に勤務し休みは水曜日と日曜日、高校で陸上部に所属していたという。理斗は23区西部、唯菜は23区東部に住んでいるということも情報交換する。他にも時間が許す限りふたりで話をした。
そして、理斗は唯菜の健康的で勝ち気なところ、唯菜は理斗の真面目そうな人物像やしっかりとした企業に勤めていることに好感を持った。
街コンの締めくくりに男性も女性も今後も話がしたいと思った人を数人、紙に書いて主催者に提出する。そこで、お互いの意向が合えばめでたくふたりで帰ることができる。
理斗も唯菜もお互いを第一希望として紙に書き、ふたりで街コンの会場を出た。それから幾度かのデートを経ておよそ二ヶ月後、ふたりは恋人同士となった。
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