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今日はわたしの誕生日。年に一度のお祝いの日だったのに、いつからだろう、誕生日を迎えることを、純粋に嬉しく思えなくなったのは。
とにかく、今年の誕生日は最悪だ。せっかく休日にあたったというのに、体調を崩したのだ。昨日の夜から悪寒を感じていたけれど、まさか熱を出すとは。
「はぁ」
せっかく今日は、婚活パーティーを予約していたのに。それにも行けなくなってしまった。
そうは言っても、体調を崩したのはわたしだ。しかたない。そう思って、偶然冷蔵庫の中にあったゼリー飲料を飲んで市販薬を服用し、布団に潜り込んだはずだった。
「きこちゃん」
誰かがわたしを呼んでいる。誰?
そっと瞼を開いてみれば、そこにはむかつくくらいに整った顔立ち。
「うわぁぁぁ」
「何その幽霊でもみたような驚き方。へこむわぁ」
「ま、まこ……?」
目の前でわたしを呼んでいるのは、二歳年下の幼馴染、まことだった。
「うん、幽霊でもなんでもなくて、きこちゃんの幼馴染のまこだよ」
「な、何でいるの、」
「熱出したっておばさんに聞いて、看病頼まれたからカギ貰って来た」
何でもないことのようにそう言ったまこは、ベッドの上で呆然としているわたしを放置して、まるで自分の家のように購入したものを片付けていく。冷えピタとか買ってきたからね、と言っているその後ろ姿に、ベッドの上で、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締めた。
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