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「食欲ある?」
「……たぶん、ある」
朝のゼリーから何も食べてない。ちょうどタイミングよくお腹を鳴らしたわたしに、まこは「待ってて」と言いながら、にやっと笑ってキッチンへ向かった。
数分後。わたしは、まこのパーカーを着せられて、ローテーブルの前に座らされていた。
目の前には作り立てのお粥がほかほかと湯気を立てている。
「まこ、お粥とか作れたの?」
「ねぇ、きこちゃん俺のこと何歳だと思ってんの」
「24歳」
「うん、そういうときはね、普通に答えられたらこっちが困るんだけどね?」
そう言ったまこは、仕上げ、と言いながらそのお粥に塩をふった。ぱら、ぱら。透明な結晶が、零れる。
「はい、出来上がり」
「……ありがと。まさかまこにお粥作ってもらう日が来るとは」
「いつか、好きな子の看病するときの練習になったからいいよ」
「……あっそ。……いただきます」
ふん、どうせ、わたしは練習台ですよ。
「あつ、」
「いやそりゃ熱いって。作り立てだもん」
まこは、そう言いながらわたしが背もたれにしているソファに我が物顔で座り込んで、スマートフォンをいじっている。ふーふーしてあげよっか、なんて上から馬鹿にしてくるので、ぷい、と顔を背ける。けれど、口の中に残った塩っけと柔らかいお出汁の味が、わたしの顔を弛ませる。
「きこちゃん、おいし?」
「……まあまあ」
「にやついてますよ、嘘吐きは泥棒の始まりって言葉知ってますかお姉さん」
「まこにしては上手、……っ、げっほ、」
「あーあー、すごい咳するじゃん、」
そう言いながら、そっと背中をさすってくれる。おい、そういうところだぞ、お前。
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