離婚前夜

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 「あなたのことを思っていますよ」と伝えるだけでも、「社長」は救われたのかもしれない。  きっと、「社長」にあの笑顔を向けられた相手は、それができたのだ。  「求める」だけではなく、「与える」ことができる人物なのだ。  だからこそ、「社長」はあんなふうに笑っていられるのだ。  娘は、私に愛情を真っ直ぐに向けてきてくれる。  だから、私もそれ以上の愛情を娘に返したい、と思う。  「社長」には求めることしかしなかった。  その結果、私は「社長」と思いを重ねることはできなくなった。 「ありがとう、堂前」  私は娘の手を握り締めながら、そう言った。 『宮森』 「だが、私には娘がいるから大丈夫だ」  そう。  私はこの子がいるから、明日のことにも向って行けるのだ。  この子を守るために、私は何でもする覚悟だった。
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