呪われた王子様と脇役の私

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 ユリエルは少しだけ怒っていた。イヴが自分を信じてくれなかったことに。  自分の中にそんな子供っぽい感情があったことに驚く。緩む口元に手を当て、俯いて表情を隠す。  イヴに渡した小瓶には当然毒が入っていた。彼女の手はいずれにせよ汚れる運命だったのだ。ただイヴが、自ら選んだだけで。彼にとっては、それが最も重要なことだった。  幼い頃、世話役として現れたイヴに心を奪われた。どんな手段を使ってもそばにいてほしかった。魔女の呪いは、彼に運命の乙女を与えたのだ。 ■ ■ ■  王国暦五二六年。  第一王子ユリエル=デディシアが戴冠し、コートニー男爵家次女であるイヴ・コートニーと結婚。彼女は男爵という身分ではあるものの、王子時代から新王を支え、「呪われた王子事件」の立役者でもある。文句を言う者は一人もおらず、国全体が二人を祝福した。結婚後も二人は仲睦まじく、王は片時も王妃を手離すことはなかった。二人は理想の夫婦として民に慕われ、王国では二人を題材にした歌劇や童話が盛んに作られた。  そのどれもがこう結ばれる。  二人はいつまでも幸福に暮らしました、と。 <了>
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