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怒のメモ
「もう! なんでヒロトはそうなの!? 知らない!」
アカリのビンタがヒロトの頬に炸裂して瞬間、チャイムが鳴る。
頬を抑えるヒロトを尻目にアカリはずんずんと自らの席に戻る。クラスメイトにして最愛の彼女アカリは怒りっぽいのが玉に瑕だ。
ヒロトは、さすさすと頬を撫でながら自らの席に戻る。なんの因果がヒロトの席はアカリの隣。痴話喧嘩の直後も並んで授業を受けなければならないのだ。
ヒロトの背筋がピシッと伸びる。これ以上アカリを怒らせる訳にはいかないが、ヒロトが思うことは『怒ったアカリも可愛いなぁ』とつい鼻の下が伸びる。
高校の授業など退屈だが、あからさまに授業をシカトしたら、やはりアカリに怒られる。なのでヒロトはいつも授業を聞いたフリをする。それがバレたのかどうかは分からないが、授業の最中、アカリはヒロトに一枚のメモを寄越した。
ヒロトがそれを開くと漢字一文字だけ『怒』と書いてあった。
え? とアカリの横顔を見るがアカリは何も言わない。ヒロトが思うことは一つ。アカリ、綺麗だな、だ。
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