『プロローグ』

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ただ、僕たちは曲がりなりにも恋人同士という関係で、始終一緒にいたのに、結局あいつは何も僕に話してくれなかったんだ、と今さらながら気づいたことは確かだ。 1年と4か月。 恋人として過ごしたのはそのうちの8か月。 時間としては短いけれど、本当に好きで、あいつも僕を好きでいてくれてると信じてたのに。 何も残していってくれなかったのが答えだったんだな、と思う。 僕のために残してくれたのは、記憶の中の不器用でも優しい表情を浮かべるあいつの顔ぐらいで。 唯一、今でもトキメキを感じるのは俺たちが初めて交わしたキスぐらい。 俺のファーストキス。 あいつもファーストキスだって言ってたけど、本当だったんだろうか。 ああ、でももういいかな。 恋はもうしなくてもいいや。 このまま、高校に進学して、大学に入って、暮らしていくには困らないぐらいのお給料をもらえる会社に勤めて。 流されるように流されて人生を過ごすのも、それもまた悪くないだろう。 そう思えるぐらいには浮上したいものだ。 ずっと一緒にいると信じていた。 ずっと好きでいると思っていた。 愛してるよ、と大人になって初めて言う相手はあいつだと思っていた。 そんな言ってしまえば、本当に些細な願いさえ叶わない俺の初恋は、最初で最後の恋となって、僕の心の中で終結をみた。
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