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ああ、またやっちゃった。
だから嫌だったのに。
知り合いと一緒にどこかに行くなんて。
それが例え大学の入学式だって関係ない。
「ご、ごめんっ。達夫くん、先に行ってもらっても大丈夫だよ。」
「んな危ないまね出来るわけねーだろ。」
一瞬、強張った笑顔を見せたが、彼はそう言うとそのまま僕の隣を歩き続けた。
++ ++
大学に着くと、既に門の前にはたくさんの人で溢れていた。
母親らしき人と一緒に門の前で写真を撮ってる女の子。
少々身体が浮いてるスーツを着ているのは十中八九、新入生だろう。
もちろん僕も、入学式用に新しいスーツを買ってもらった。
とはいえ、どちらと言えば小柄に位置する僕が着るスーツは、なかなか既製品の中には無くて、半オーダーといえそこそこ良い値段まで跳ね上がった物となった。
まるで七五三みたいだ・・・。
僕はスーツじゃなくてジャケットにシャツで良かったんだけど、流石にそんな格好で入学式に出る学生はいないぞ、と言われ、それなら入学式には出なくていいや、と言ったら強制的に紳士服専門店まで連行された。
曰く、『学費を出してやるのはコッチだから、そこは言うことを聞くように』ということらしい。
まぁ、結果的には両親の判断通りにみんな通り一辺倒スーツを着て参列してるんだから、言いなりになって良かったということだ。
悪目立ちはしたくない。
「ひゃー、やっぱり凄い人だなぁ。おい、生実っ。俺たちも一緒に写真撮ろうぜ。」
「嫌だ。」
「えーいいだろ。一緒に撮ろうぜ~。記念だって、記念っ。」
何度も嫌だと言っているのに、達夫くんは聞く耳持たず。いや、僕の意向は無視してズルズルと僕を門の前まで引きずっていった。
はっはずかしいっ
周りの何十もの目が僕たちを見ているように感じる。
カーッと顔に血が上る。
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