コオルテオコル

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★ 救急室で横たわる内村は、右腕を抑え苦痛に顔を歪めている。覆ったタオルはおびただしい血液で満たされていた。 「まずいな……、出血が止まらない。それに手の感覚がないし、指も動かないみたいだ」 なにせ手は外科医の商売道具だ。内村は身上の不幸を呪わずにはいられないはずだ。 当直医が巻いた応急処置の包帯を外すと、右手は力なく垂れ下がっていた。傷口を確認したところ、手は青紫色に変色し、血液が行き届いていないようだ。すぐさまレントゲンの画像を入念に確認したところ、手の骨は粉々に砕けていた。 「内村、これから緊急手術だ。俺が執刀する」 「すまんな、頼む」 「できるだけのことはするが、傷がひどい場合は切断しなくちゃいけなくなるかもしれない」 「ああ、それは分かってる。まったく、よりによってこの手が挟まれるなんて」 「事故現場を見たが、かなりの衝撃だったようだぞ。下手すりゃ命を落としていたところだ」 画像と傷の状態を見ながら損傷の程度を推定し、どのようにアプローチするかを脳裏に描いていると、ほどなくして看護師が高林を呼びにきた。 「先生、手術の準備ができました」 「ああ、すぐに手術室へ向かう。内村を搬送して麻酔の準備を済ませておいてくれ」 「わかりました。麻酔科医にも伝えておきます」 そして高林は手術室へと向かった。
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