コオルテオコル

6/12

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「実はな、君が手術を終えたあと、彼のことを〇〇大学の高尾利教授に相談したんだ」 ――高尾利教授。 再建術・再生医療の神様と謳われる、まさに神の手を持つ医師だ。この世界における、高林の究極の目標と言っても過言ではない。 「受傷部位の画像とレントゲン、それから切断後の画像所見もカルテから抽出して送っておいた。すると、手の保存状態が良ければ再建できる可能性が高いとおっしゃってくださった」 「高尾利先生が、じきじきに再手術をなさるということですか?」 「ああ。なにせ、高尾利教授が自ら言い出してくださったのだ。『なにせ内村は若手のホープだ』とおっしゃっていたからな」 ――なんだと? 高林は驚愕した。第一人者である高尾利教授に一目置かれているなんて、と。そして高尾利教授が手術を請け負えば、彼の右手は復活するかもしれない。 その言葉に、高林は自身と内村の扱いの決定的な違いを感じ取った。さらに手術が成功すれば、高林の判断は否定されてしまうことになる。 青ざめる高林に対して、安西は期待を込めて尋ねる。 「明日の朝いちばんで当院にお越しくださるそうだ。連日で申し訳ないが、せっかく高尾利教授の腕前を拝見できるチャンスだ。君が彼をサポートしてくれないか」 「はっ、はい! ぜひ、やらせていただきます!」 即答したのは、ためらいや罪悪感を悟られないようにするためだ。 そんなふたりの会話は内村の意識には届いていないようで、相も変わらず腕をふわふわと漂わせている。まるで夢の中で手術をしているような雰囲気だった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加