コオルテオコル

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ビリ、ビリ、ビリビリピリ……。 包装のビニールパックが破られ、手が袋から這い出してくる。 「ひっ……!」 高林は悲鳴を上げ、そろそろと後ずさりをする。目を切らさないように引き出しを開けて手で探ると、冷たいアルミ製のトレイが手に触れた。取り出してすばやく加温期に覆いかぶせ、その上に重石を乗せて右手を加温器の中に閉じ込めた。 ガタッ、ガタガタ……ガタガタガタガタッ! 手の動きは激しくなり、蓋のトレイを鳴らす音はさらに派手になる。 トレイがわずかに持ち上がり、加温器とトレイの隙間から指先が顔を出した。まるで見つめるように指先を高林に向けている。 指が一本、さらにもう一本と、トレイの隙間から現れる。 ずりっ、ずりっ……。 高林は信じられない光景を目の当たりにして、内村が言っていたことを思い出した。 『僕のおかげじゃなくて、この右手のおかげだよ。腫瘍を切ってくれるのはこいつなんだから』 まるで手が主人とは別の意思を宿しているかのような言い方だった。けれどひとりでに動く手を目の当たりにすると、内村の言葉は比喩ではなく、言葉の意味通りのように感じられた。まさかと思い、得体の知れない恐怖が高林を支配する。 もう、ためらっている余裕などなかった。高林は加温器の温度を最大にし、ピペットで指先を挟んで加温器の中に押し戻した。手は抵抗したがいったん湯の中に落ちるとおとなしくなった。
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