神さま

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神さま

──神さま、神さま。どこにいらっしゃるのですか。どうかぼくの願いを聞いてください──    心の中で祈りながら当てもなく進む。よろよろふらふらと進んでいると、突然ふわりとした感覚がぼくを包んだ。温かくて大きな手に乗っているようなその感覚は、少しだけ、悠くんの手の上で目覚めたときに感じた温もりと似ていた。  驚いて辺りを見回しても真っ白な世界に変わりはない。   「神さま……?」    見えないけれどその存在を感じ、呟くように問いかける。するとぼくの心の中にそっと響くように、柔らかくて優しい声がぼくに答えてくれた。   『ええ。よく、ここまで来ましたね。わたしの愛しい子。さぁ、あなたの願いは何かしら』   ──やった、神さまに会えた。悠くん、大丈夫だよ。きっと明日は晴れるからね──    嬉しくて、ぼくは動かない顔に笑みを浮かべて急いで言った。   「あの、あのね、神さま。ぼく、明日は晴れにしてほしいの。雨が降ったら悠くんの運動会がなくなっちゃう。悠くん、すごく楽しみにしてたから、お願い神さま、明日は晴れにしてください」    嬉しいのと夢中なのとで、うっかりくだけた口調になっていたぼくを、神さまがくすりと笑うのが聞こえた。その柔らかい雰囲気に安堵したのもほんの一瞬。落ち着いた、静かな声で神さまはぼくに仰られた。   『それはできないわ、愛しい子。明日の天気はもう決まっているの』
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