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天気の仕組み
──え……?──
呆然として何も言えなかった。
──どうして。ぼく、こんなに頑張ったのに。悠くん、一生懸命ぼくを作ってくれたのに──
最初の驚きが過ぎると、次にふつふつとお腹のあたりが熱くなるのを感じた。それは初めて感じる怒りの感情だった。その感情の名前に気付くよりも先に、ぼくは神さまに向かってそれをぶつけていた。
「どうして? ねぇ、神さま。だって悠くん、あんなに晴れてほしいって言ってたのに。ぼくのことも頑張って作ってくれたんだよ? お願いします、神さま」
必死だった。このまま帰れない。明日雨が降ったら悠くんきっと泣いちゃうもの。
何もない空間を見上げて言うぼくに、諭すように静かに神さまの声が話しかけてきた。
『あの男の子が太陽を望む気持ちはわたくしもよく知っています。ですが、雨は世界に必要なものなのです。地を潤し、作物をはぐくむ。こうして世界は育ってきたの。ひとりの望みで天気は変えられない』
とても優しい声だった。何より、雨が必要なことはぼくもよく分かっている。だけど、だけど……。悠くん……。
しゅんと俯いてしまったぼくに、神さまは続けた。
『悲しまないで、愛しい子。あなたたち、てるてる坊主の役割は人の願いを叶えることではない。あなたも知っているわね?』
そう、ぼくはその答えを知っている。悠くんの手で作られ、生まれたときから分かっていた。
『人の願いが込められたあなたたちは、いつかその願いに姿を変える。雨となって地を潤し、光となって世界を暖めるの。あなたもいつか、あの男の子の元へ行くでしょう』
それがぼくの、ぼくたちの本当の幸せだと知っている。雨となってみんなの喜ぶ顔の元へ落ちていき、光となってみんなの笑顔を照らすんだ。とても幸せな、ぼくたちの役割。
だけど、ぼくは……。
『ねぇ、ぼくのてるてるぼうずさん』
ぼくはやっぱり、明日の悠くんに、笑ってほしいんだ。
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