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 ふぅっと、暖かい風が通り抜けるのを感じた。それはきっと、神さまの吐息。  ぼくはその風にのってふわりと浮き上がり、飛ばされていく。風とともに雨粒のたっぷり詰まった雲に飛び込むと、ぼくは光となって雨粒を霧に変えていった。  やがて雲が消えて晴れ渡った青空が見えるようになったころ、ぼくは段々と薄く、軽くなっていった。   ──悠くん、大丈夫。これで明日はきっと晴れるよ──    最後に思っていたのは、ぼくを見てにっこりと笑った悠くんのこと。明日もきっと、悠くんは笑ってる。      こうしてぼくは、空に溶けていった。
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