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再び街道へ(三)
「余るっていうなら、仕方がないよな? 玉瀬」
「そうですね。余るのなら、少し頂いていきましょうか」
笑顔で頷いた店主は、すぐに包みを作ってくれる。
そういうわけで、他の店からも余りそうな品々を手渡され、二人の荷は大分膨らんだ。
皆に見送られ、玉瀬らはまた、別の地へ向け歩き始める。
道中、玉瀬は偽者の師の言動を思い出し、今更ながらむず痒さに襲われていた。
(師匠はおれが転んだくらいで、あんなに気づかってこないもんな)
ただし、それでいて弟子のことはよく見ている男である。今回も、玉瀬の力量ならば任せられると判断し、自分は援護に徹していたのだ。
玉瀬も、彼がそういう人物だと分かっていた。だから、普段、惚けた性質に嘆くことがあろうとも、晴道を慕ってついていくのだ。
上辺の優しい振る舞いは、二人には必要ないのであった。
【完】
二人の旅についてきてくださり、ありがとうございました!
今回は「絆」に重きをおいてみました。普段から意識するものではないですが、そういうものは、いざという時に推し量れるのだろうなと思いながら書いたお話です。
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