対峙(二)

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対峙(二)

 鋭く前を見据えながら、玉瀬は女へ斬り込んだ。  先とは反対に、今度は女が後退(あとずさ)る。ひと振りで仕留めることは叶わなかったが、攻めの姿勢は崩さない。  そして、(やいば)が遂に女を捉えた。 「……っ!」  が、次の瞬間、表情を硬くしたのは玉瀬のほうだった。  狙いが逸れ、思ったほど深手にはならなかったのだ。  すぐさま反撃に出た女が、首に腕を回して絞め上げてきた。  息を吸うのも難しく、そのため呪文も途切れてしまう。視界が狭まり、めまいに襲われる。  女がにたりと笑みを浮かべた。 「良い具合に腹が減ってきた」  舌なめずりの合間に、不気味な言葉が放たれた。
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