束の間の寄り道(二)

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束の間の寄り道(二)

 さて、のんびり腰を下ろしていると、不意に店主の男から声がかかった。 「お客さん、旅のお人だろう? 今日はどこぞで宿を取るつもりかい?」  いきなりの問いに、二人は振り返って頷いた。 「ええ。この季節に野宿は、少し辛いので」  玉瀬がそう応じる。  もう半月もすれば年が明ける、冬の只中だ。夜に野ざらしで過ごすのは、できれば御免被りたい。 「それなら、そろそろ出発したほうがいいよ。隣町まで行かないと泊まれる所はないからね」  言われて、師弟は顔を見合わせた。  それから辺りに目をやって、玉瀬が首を傾げる。 「ですが、ほら。宿なら少し先に見えますよ? それとも、利用客が多くて入れないんでしょうか?」  その言葉どおり、少なくとも二軒の宿屋が視界のうちにあった。食べ物は持参し、他の者と隔たりのない板間で眠る安い木賃宿(きちんやど)だ。  先ほどから道行く人もさほどいない。そのため、空きはあると思われるのだが。  玉瀬が問うと、店主は(かぶり)を振った。
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