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再び街道へ(二)
「それから、昨日、謝礼はいらないと言われたけれど。やっぱり、そういうわけにはいかないから。これ……」
饅頭屋の店主は、皆で出し合ったものだと言って、袋に入った金子を差し出した。
「少なくて申し訳ないんだが」
これに師弟が目を交わす。玉瀬が口を開いた。
「受け取れません。そういう約束だったでしょう?」
「いや、でも……」
言い募る相手に、玉瀬はきっぱり首を振った。
困り顔になった店主が、少し考えてから提案する。
「じゃあ、せめて、うちの饅頭を持っていってくれるかい? すぐに客足が戻るものでもない。余ったらもったいないからね」
もっともらしい言い回しに、二人は観念して笑った。
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