不穏な噂(二)

1/1
前へ
/21ページ
次へ

不穏な噂(二)

「つい半年くらい前からだよ。池はこの峠道を外れた林にあるんだがね。どうも、恐ろしい者が()みついたようで」 「その池に人間が呑まれると? 見た人がいるんですか?」 「いいや、目の当たりにした者はいないんだ。だけど、林に入っていく人たちのことは、多くが目撃していてね。私も店を終えて帰ろうという時に、何度か見かけたよ。しっかりした足取りで、皆、決まって誰かと連れ立っていた」  その人々は、それきり誰一人として姿を見せなかった。  そんな奇妙が続いたので、近くで商いをする者たちが集まり、一度林に踏み入れてみたのだとか。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加