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不穏な噂(四)
「それは、さぞお困りでしょう。このまま立ち去るのでは、私たちもすっきりしない。ですから、日暮れにでも見に行くことにします」
晴道が気軽な調子で言ったため、店主は彼が話半分に聞いていると思ったようだ。渋い顔で釘をさしてくる。
「面白がって近づくのは止してくれ。命を落とすよ。そうなったら、私らも寝覚めが悪いじゃないか。信じられないなら、他の店でも聞いてみればいい」
師の余裕が、店主の目にはお気楽に映ったのか。
そう思った玉瀬は、誠意が伝わるよう精一杯顔を引き締めた。
「いいえ。僕たちは、あなたの話を信じています」
真っ直ぐに見つめると、店主は少々たじろぐ。
「じゃあ、どうして池に行くなんて……」
尻すぼみの言葉にすかさず答える。
「僕たち術師なんです」
「え?」
驚く店主へ向け、玉瀬はちょっと笑んだ。
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