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「待って! やっぱ一緒に行く!」
振り返ったマユとユータは少し困った顔をした。私は、それに気付かないフリをして、二人の間に飛び込んだ。
「コーヘイと二人でもいっかなって思ったんだけど、四人が揃うの久し振りだし。途中で帰ってあげるから、ちょっとだけお邪魔させてよ。ほら、コーヘイ。早くしないと置いてくよ!」
ずっと遠くにいるコーヘイに手招きする。
「……分かったよ!」
走り寄ってくるコーヘイは、いつもの無表情だ。ごめんね。消してしまったあの笑顔に、心の中で謝っておく。
「さあ、四人そろったところで、しゅっぱーつ!」
ユータ、マユ、私、コーヘイ。横一列になって歩くと、長く伸びた四人の影が、オレンジ色に染まる並木道に縞模様を描き出す。いつまでも交わることのない、絶望的な模様。
それでも私はユータの隣にいたい。
友達の顔をして。好きという言葉を飲み込んで。痛みを鼓動にして。
「お前、バカだな」
コーヘイが私にだけ聞こえるように呟いた。
「うん。みーんなバカ。バカばっかり。それでいいじゃん」
私たちは仲良し四人組。
いつまでも、どこまでも、ずっと変わらないって信じているフリを続けていく。
「ね、じゃんけんしよっか。負けた人がみんなにおごるの」
「いーね。アカリ、ナイスアイディア」
「えー、今日の主役はあたしなのになー」
「じゃあ、マユが負けたらユータがおごりってことで」
「おい、アカリ。それマジかよ。俺、いま金欠なんですけど」
「いいじゃん、頑張れよ彼氏」
「じゃあいくよー」
「せーの」
「じゃんけん……」
「ぽんっ!」
四つの手が、思い思いのかたちを作った。
【END】
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