イカリを沈める

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「クマ?」  僕は少し食い気味に聞き返した。 「そう、熊だ。確か、喧嘩をしていたのは毎回、熊肉を食べたお客さんだけだった」  先程までの静けさとは打って変わって、友人の声色は上ずっている。 「熊肉を食べた……ねぇ……」  僕は、その情報を体の中に流し込むみたいにアルコールを一口飲んだ。ジョッキのふちについたままの泡をぼんやりと眺める。頭を掻く。首を撫でる。ううむ……。 「それだけじゃあ、なあ。何も思いつかないな」  僕の言葉を聞いて、友人はうなだれた。そんなに僕に期待していたのか。別に僕は、探偵を生業にしているわけじゃないのに。 「そうだよなあ……悪かった。まあ、俺にできることを一個ずつやっていくことにするよ」  その日はそれからもう少しだけ飲んで帰った。何か手伝えることがあればいつでも言ってくれと伝えて。
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