0人が本棚に入れています
本棚に追加
「クマ?」
僕は少し食い気味に聞き返した。
「そう、熊だ。確か、喧嘩をしていたのは毎回、熊肉を食べたお客さんだけだった」
先程までの静けさとは打って変わって、友人の声色は上ずっている。
「熊肉を食べた……ねぇ……」
僕は、その情報を体の中に流し込むみたいにアルコールを一口飲んだ。ジョッキのふちについたままの泡をぼんやりと眺める。頭を掻く。首を撫でる。ううむ……。
「それだけじゃあ、なあ。何も思いつかないな」
僕の言葉を聞いて、友人はうなだれた。そんなに僕に期待していたのか。別に僕は、探偵を生業にしているわけじゃないのに。
「そうだよなあ……悪かった。まあ、俺にできることを一個ずつやっていくことにするよ」
その日はそれからもう少しだけ飲んで帰った。何か手伝えることがあればいつでも言ってくれと伝えて。
最初のコメントを投稿しよう!