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私は前田に訊ねる。
「何かいいことあった?」
「わかります? 実は宝くじにあたりましてね。それほど大した額じゃないんですが……昼飯、おごりますよ」
私は驚く。すごいぞ。この装置、性能は確かだ。これがあれば、人の心が読める。
ようし、それなら……。
私は、入口近くのデスクに座っている、横溝さんの様子をうかがう。
横溝さんは社のマドンナ的存在で、かくいう私も実は彼女に気があったりする。
彼女の良いところは、その前向きな表情だ。今日も横溝さんの表情は、朗らかで溌剌としている。
私は横溝さんに装置を向ける。
「哀」のグラフが、ぐっと上へ動く。目盛りは90を指している。
「哀:90」は、「泣きたいほど悲しい」。そんな! あんなに元気そうなのに。
しかし前田に試した結果から、この装置の正確さは明らかだ。
横溝さんに、何かあったのだろうか。
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