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私はそっと席を立ち、給湯室へ向かう。
ポットの湯は沸いている。私はそのお湯を使ってホットティーを淹れる。
横溝さんがこの紅茶を大好きなことは知っている。
部屋へ戻り、ホットティーを片手に横溝さんの席に近づく。
こんな大胆な行動に出るのは、生まれて初めてだ。私の心臓は恐ろしいほど高鳴っている。
「横溝さん、これよかったらどうぞ」
驚いてこちらを見る横溝さん。
小さな声で、
「ありがとうございます」
そう言ったかと思うと、突然彼女は両腕に顔を埋めて泣き始める。
「何かあったんですか」
私はハンカチを渡し、彼女の背に手をやりながら訊ねる。
「ペコが……私のトイプードルが、死んでしまったんです」
「それはお気の毒に……」
しばらく泣いたあと、彼女はバツが悪そうに顔を赤らめ、
「気が利くんですね」
と微笑んだ。
私は内心ガッツポーズをとる。
やったぜ、この「e-meter」は最高の装置だ!
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