e-meter

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 おかしい。故障だろうか?  「怒」の数値が70を指している。  そんなはずはない。勅使河原さんの顔は、いつも通り穏やかそのものだ。 「きゃっ」  横溝さんが小さく叫ぶ。  勅使河原さんが横溝さんのデスクの横を通りかかった瞬間、横溝さんがホットティーの入ったカップを倒したのだ。  グレーのスーツ姿の勅使河原さんへ、紅茶がまともに降り注ぐ。  特に下半身が大惨事だ。 「ごめんなさい! 勅使河原さん」  慌てて謝る横溝さん。  勅使河原さんはポケットからハンカチを取り出しながら、穏やかに言う。 「気にしなくていいです。安物ですよ」  だが勅使河原さんのピシッと一本線が入ったスラックスは、とても安物には見えない。  いや、そんなことは問題ではなかった。問題なのは、装置の数値だ。
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