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「いよいよ、明日ですね」
「うん、そうだな。やっとここまで来たんだ」
研究室の時計は、午後9時を指していた。
「あと3時間で、明日ですよ」
「そうだな、明日は早いから、もう今日は終わりにしよう」
彼らは、準備の終えた明日の発表用資料をちらりと見て安堵した。
* * *
目の前にある高級そうな椅子とその後ろに繋がった複雑そうな機械には、彼らの長年の成果が詰まっていた。
彼らは人生の全てをかけてこの『タイムマシン』を開発してきたのだった。
この機械を使って、未来から優れた科学技術を持ち帰り、エネルギー資源の枯渇や環境汚染の問題、それに伴う貧困の拡大や民族間の戦争を食い止める、それが彼らの目標だった。
いままでのタイムマシンの問題点は、未来や過去に行った時に、タイムトラベラーの子孫や先祖といった個人的な領域で干渉を行おうとしたために、パラドクスが発生してしまうからだ、と言うのが彼らの考え方だった。
だからこそ、彼らのタイムマシンでは未来の技術の『情報』だけを持ち帰る部分に主眼を置き、タイムトラベラー個人の記憶は持ち帰らないようになっていた。
そして、そのタイムマシンは完成し、明日発表会を行う予定なのだった。
* * *
――と、その機械が突然光出す。
「あれ、機械が動いているような……」
「そんな馬鹿な。電源は入っていないはずだが」
そして、彼らは機械からあふれ出るまばゆいばかりの光に巻き込まれるように消えて行った。
* * *
「いよいよ、明日ですね」
「うん、そうだな。やっとここまで来たんだ」
研究室の時計は、午前9時(!)を指していた。
「あと15時間で、明日ですよ」
「そうだな。明日は早いから、今日は早めに終わりにしよう」
彼らは、明日の発表用資料の準備を始めた。
……その横に置いてある作成済みの発表用資料に彼らが気づくことはなかった。
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