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〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。
「キュラ、お土産だよ」
満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差し出してくる。怒っているキュラの表情など見えていないように。
〈マの森〉には幻獣がいて、幻を見せて森の奥へ奥へと誘い込むと言われているのだ。〈マの森〉に一人で入り、二度と帰ってこなかった人は過去に何人もいる。ポラがいつ幻に誘われてしまうか、キュラは気が気でないのに。
「幻になんか惑わされないよ。キュラが村にいるから、ちゃんと帰るよ」
「幻がなくても、遭難するかもしれないでしょ」
キュラが本気で怒っていることにようやく気が付くと、ポラは謝り、もう行かないと言うのだが。
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