ロンリー・キッズ

2/30
前へ
/30ページ
次へ
 海も空も、ほんとはこんな色じゃない。 シャレたカフェバーの裏の暗がりの恐さを、みんな知らない。多分、知る必要もない。 「何?」  光の加減でブルーに見えた瞳は、薄い茶色だった。潮で灯けたような髪の毛はサラサラで、思わず手を伸ばしたくなる。  領。 「あんたの客らしいよ」 「へえ」 「すごくイイ男よ、めったに見ないくらい」 「ふーん」 「アメリカーじゃないよ。あれはきっと、東京あたりから来た男だね」  彼は少し興味を示した。 「ああ、もったいない!  あんなにイイ男が、女じゃダメ、なんてさ!」  女たちのプーイングを聞きながら、領は“ナゴミ”を出て、露地裏に面した小さなホテルの3階に上がって行った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加