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海も空も、ほんとはこんな色じゃない。
シャレたカフェバーの裏の暗がりの恐さを、みんな知らない。多分、知る必要もない。
「何?」
光の加減でブルーに見えた瞳は、薄い茶色だった。潮で灯けたような髪の毛はサラサラで、思わず手を伸ばしたくなる。
領。
「あんたの客らしいよ」
「へえ」
「すごくイイ男よ、めったに見ないくらい」
「ふーん」
「アメリカーじゃないよ。あれはきっと、東京あたりから来た男だね」
彼は少し興味を示した。
「ああ、もったいない! あんなにイイ男が、女じゃダメ、なんてさ!」
女たちのプーイングを聞きながら、領は“ナゴミ”を出て、露地裏に面した小さなホテルの3階に上がって行った。
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